荒川下流域の外来植物防除活動

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 荒川水辺サポーターの皆様には、外来植物の防除対策にもご協力いただいております。
 防除対象となる外来植物は、自然地に多くみられる「セイタカアワダチソウ」と「オオブタクサ」を中心に除去していただいております。
 また、自然地で除去対象にしている特定外来植物は、「結実前のアレチウリ」のみに限定しています。

外来生物(植物)

セイタカアワダチソウ

〔別名:セイタカアキノキリンソウ 学名:Solidago altissima キク科 多年生草本〕

河原に繁茂するセイタカアワダチソウ(荒川,2012.10.29撮影)
  • 除去適期:4月~11月頃
    • 開花期(秋/10~11月頃):黄色い花が目立ち、見分けやすいため作業しやすい
    • 生長期(春~夏):地上部が大きく生長する7月頃までに抜き取ることが効果的であるが、目立つ特徴がないため見分けにくい一面がある
  • 除去方法:できるだけ地下部が残らないよう抜き取るのが効果的
在来種や在来生態系への影響他の植物の生育を阻害する
セイタカアワダチソウ についてもっと知る

 セイタカアワダチソウは多年草で、刈り取った場合、翌年も地中の地下茎から成長します。したがって、できるだけ地下部が残らないよう抜き取るのが効果的です。

 いつ抜き取っても効果はありますが、特に花の咲く秋季(10月頃)に実施すると、セイタカアワダチソウの花が目立って、ほかの植物と見分けやすいため、作業しやすいでしょう。

 地下部に栄養を蓄えているこの時期の抜き取りは、効果の面からみてもよい対策といえます。

特徴

  • 北アメリカ原産
  • 河原や市街の空き地などでよくみられる
  • 河川では水に浸かりにくい高水敷に生育する
  • タネで増えるほか、地下茎を伸ばして分布を広げる。
春期(多摩川,2006.4.26撮影)

葉や茎には短い毛があり、触るとザラザラする。(花をつける前は、希少種のタコノアシに似るが、タコノアシは湿地に生育し、葉や茎に毛はない。)

花(鬼怒川,2006.10.12撮影)

花が特徴的で、黄色の小花が円錐形につく

夏期(荒川,2007.8.14撮影)

草丈は高く、2~3mに生長する

果実(多摩川,2007.1.27撮影)

果実には毛があり、風で広がる

越冬期(多摩川,2007.1.4撮影)
芽生え(多摩川,2006.10.3撮影)

オオブタクサ

〔別名:クワモドキ 学名:Ambrosia trifida キク科 一年生草本〕

河原に繁茂するオオブタクサ(多摩川, 2006.9.20撮影)
  • 除去適期:4月下旬~7月頃
    • 花粉が飛散する前(7月末頃まで)の作業が適している
    • 大きく生長する前(春頃)の作業が比較的ラクですが、他の植物との見分けが難しい場合は、6~7月頃が目立って作業しやすい
  • 除去方法:抜き取るのが効果的
在来種や在来生態系への影響春の早い時期に芽生えて急生長するため、ほかの植物を被陰してしまうことがある。湿地や河原等に生育する在来植物と競合し、駆逐する。
人間活動への影響風媒花で、⼤量の花粉を飛ばすため花粉症の原因植物となっている。
オオブタクサ についてもっと知る

 オオブタクサは花粉症の原因植物なので、除草する場合は、参加者の方々の健康を考慮し、花が咲いて花粉が飛散する前(7月末頃まで)に行うことが適しています。

 1~3mと大きくなるため、春の小さい時期のほうが作業がらくですが、ほかの植物と見分けるのが難しい場合は、大きく成長した時期(6~7月頃)が目立って分かりやすいでしょう。

 刈り取る時期によっては、その後に花をつける可能性もあるため、抜き取るのがよいでしょう。一年草で地下茎のつながりもないので、抜き取りは比較的容易にできます。

特徴

  • 北アメリカ原産
  • 河原や市街の空き地などでよくみられる
  • ブタクサ花粉症の原因植物であり、開花期の除草作業は避けるなどの注意が必要
開花期(久慈川,2006.8.30撮影)

夏(7~9月ごろ)に花を咲かせる。雄花と雌花があり、風で花粉が媒介される。

芽生え(多摩川,2006.4.26撮影)

草高は高く、1~3mに生長し、大きいものでは4mを超えるようになる

葉(里川,2006.6.26撮影)

葉は手のひら状に3~7つに大きく裂ける

雄花(久慈川,2006.8.30撮影)

開花期になると、茎の頂部に雄花が集まった5~20cmの穂をつける

雌花(多摩川,2006.9.20撮影)

雌花は雄花の根元に集まってつく

果実(鬼怒川,2006.10.12撮影)

その他の外来植物例

イタチハギ

別名:クロバナエンジュ
学名:Amorpha fruticosa マメ科 落葉低⽊

  • 除去適期:4~9月
  • 除去方法:伐採・萌芽の抜き取り
在来種や在来生態系への影響萌芽力があり生長が速く叢生するため、他の植物の生育を阻害する。
土壌に窒素分を供給して肥沃化させ、土質を変化させる。
治水・利水への影響洪水時の流水阻害、流木となり河川構造物に堆積する
人間活動への影響病原菌を媒介し、農作物に被害を及ぼす

シナダレスズメガヤ

別名:ウィーピングラブグラス
学名:Eragrostis curvula イネ科 多年生草本

  • 除去適期:4~10月
  • 除去方法:⼩さいうちに抜き取る
在来種や在来生態系への影響植⽣の上を覆うように繁茂するため、他の植物の生育を阻害する。
礫河原では、砂の堆積を促進することにより、河床材料を変化させ、河原固有の生物の生育・生息環境を悪化させる。
治水・利水への影響土砂を堆積させるため、洪水の流下を阻害する。

オオオナモミ
〔キク科、一年生草本〕

ブタクサ
〔キク科、一年生草本〕

シロツメクサ
〔マメ科、多年生草本〕

ヘラオオバコ
〔オオバコ科、多年生草本〕

特定外来生物(植物)

アレチウリ

〔学名:Sicyos angulatus ウリ科 一年生草本〕

河原に繁茂するアレチウリ(天竜川, 2006.9.1撮影)
  • 除去適期:特例で結実前(春~秋(4~9月ごろまで)の期間内)限定で除草可能
  • 除去方法:芽生えの時期に抜き取るのが効果的
  • 除去後の対応:タネ等が拡散して分布が広がるのを防ぐため、活動場所から決して持ち出さず、他の植物と同様に現地に積み置く
在来種や在来生態系への影響植生の上を覆うように繁茂するため、他の植物の生育を阻害する
人間活動への影響耕作地等に侵入した場合、農産業に被害が生じる。
実の表面にトゲがあるため、けがをする。
アレチウリ についてもっと知る

特徴

  • 北アメリカ原産
  • 栄養が豊富で日当たりのよい場所を好む
葉(那珂川, 2006.6.27撮影)

葉は手のひら状で、表面に細かいトゲがある

茎(多摩川, 2006.10.3撮影)

10mを超えることもある茎は、つる状に長く伸び、地表やほかの植物に覆いかぶさるように成長する

果実(多摩川, 2006.10.3撮影)

果実には鋭いトゲがあるので、注意が必要

芽生え期(秋川, 2006.5.10撮影)

同じ株に雌花と雄花ができる

雄花(天竜川, 2006.9.14撮影)
雌花(天竜川, 2006.9.11撮影)

オオカワヂシャ

〔別名:オオカワジサ 学名:Veronica anagallis-aquatica オオバコ科 越年生草本または多年生草本〕

河原に繁茂するオオカワヂシャ(鬼怒川, 2006.5.8撮影)
  • オオカワヂシャは、以下の理由から自然地での除去対象外としています
    • 保全上重要な植物のカワヂシャとよく似ており、見分けが難しい
    • 地下茎から増える
    • 除草後の植物体から分布が拡散する恐れがある
  • もし見つけた場合は、事務局までお知らせください
在来種や在来生態系への影響他の植物の生育を阻害する。
在来種のカワヂシャ(環境省レッドリスト準絶滅危惧種)と同じ環境に生育し、交雑して、ホナガカワヂシャと呼ばれる雑種を形成する。
オオカワヂシャ についてもっと知る

特徴

  • ヨーロッパ~アジア北部原産
  • 湖沼や河川の岸、水田などの湿地や水深の浅い場所を好み、流水中でも生育する
  • タネで増えるほか、地下茎を伸ばして分布を広げる
  • 在来の希少種カワヂシャと交雑する。
枝分かれして増える
果実(多摩川, 2006.5.9撮影)
越冬期(烏川,2006.12.13撮影)

在来種のカワヂシャとよく似るが、オオカワヂシャのほうが葉の縁のギザギザがゆるやかで、花の色が濃い

オオカワヂシャの花(鬼怒川, 2006.5.8撮影)

淡い紫色の花を咲かせる。秋ごろにもう一度咲くタイプもある。

在来の希少種カワヂシャ(秋川, 2006.5.10撮影)
カワヂシャの花(秋川, 2006.5.10撮影)

ナガエツルノゲイトウ

〔学名:Alternanthera philoxeroides ヒユ科 多年生草本〕

群生するナガエツルノゲイトウ(霞ヶ浦, 2017.10.5)
  • 南アメリカ原産
  • 水辺の湿った環境に生える多年草
  • 日当たりの良い肥沃な条件下では急激に増殖する
  • 開花期は春から秋(4~10月ごろ)だが、一年中開花することもある
  • 長期間乾燥に耐えられ、陸上植物としても生育できる
  • 淡水に生育するが耐塩性が高い
在来種や在来生態系への影響水面を一面に覆うと酸素欠乏を生じさせ、水生生物の生育・生息環境を悪化させる。在来生物と競合する。
治水・利水への影響植物体が水門等の施設に堆積し、ゲートの開閉等を妨げる。
枯死して腐敗すると、水質の悪化を引き起こす。
人間活動への影響船舶やカヌーの航行阻害を引き起こす。
ナガエツルノゲイトウ についてもっと知る
葉(那珂川, 2006.6.27撮影)

葉は倒卵形~倒広被針形の細かい鋸歯を持つ

茎(多摩川, 2006.10.3撮影)

匍匐した茎が数多く分岐し、茎切片による栄養繁殖が旺盛

芽生え期(秋川, 2006.5.10撮影)
雄花(天竜川, 2006.9.14撮影)
雌花(天竜川, 2006.9.11撮影)
果実(多摩川, 2006.10.3撮影)

12~16㎜の白い球状の花が咲く

オオキンケイギク

〔学名:Coreopsis lanceolata キク科 多年生草本〕

開花期のオオキンケイギク(多摩川, 2006.6.1撮影)
  • 北アメリカ原産
  • 陸生の多年草で路傍、河川敷、線路際、海岸など、日当たりの良い所に生育する。
  • 開花期は春から夏(5~7月ごろ)
  • ホソバオオキンケイギク、オラゲオオキンケイギクを区別することもある
在来種や在来生態系への影響他の植物に届く光を遮ってその生育を阻害する等、競争により他の植物種を排除し、置き換わる
オオキンケイギク についてもっと知る
葉(多摩川, 2006.9.18撮影)

葉はへら状で、粗い毛がある

茎(多摩川, 2006.6.1撮影)

茎は高さ30~70cm

根茎(多摩川,2006.12.12撮影)
実(多摩川, 2006.9.20撮影)
花(多摩川, 2006.6.1撮影)

花は黄色一色であり、舌状花は8~10枚で先端がギザギザしている

群生状態(多摩川,2006.12.12撮影)

繁殖力が旺盛でおおきな群落を形成する

ミズヒマワリ

〔学名:Gymnocoronis spilanthoides キク科 多年生草本〕

群落するミズヒマワリ(江戸川, 2019.9.4撮影)
  • 中央・南アメリカ原産
  • 種子で増える
  • 生育が早く、短期間で大きなコロニーを形成する
  • アレロパシー活性があり、他の植物を排除する場合がある
在来種や在来生態系への影響水面を覆うように成長・繁茂すると、在来植物の生育を抑制する。
訪花昆虫を誘因するため、虫媒植物への影響も懸念されている
治水・利水への影響河川や水路等で繁茂すると、流された植物体が水門等の施設に堆積し、水の流れや施設の操作を妨げるとともに、洪水時の流水阻害を
引き起こす。
ミズヒマワリ についてもっと知る
花(江戸川, 2022.7.11撮影)

開花期:夏から秋(9~10月ごろ)だが、6~10月まで開花との報告もある

葉(荒川,2021.6.1撮影)

葉がヒマワリの葉に似ており、先に行くほど細長くなり、縁が低い鋸歯がある

水中根(新利根川, 2017.10.17撮影)

抽水性の多年草で、高さが0.5~1m以上になる

根と茎(江戸川, 2019.7.30撮影)

ちぎれた茎から繁殖が旺盛

オオフサモ

〔別名:パロットフェザー、ヌマフサモ 学名:Myriophyllum aquaticum アリノトウグサ科 多年生草本〕

水路に群生するオオフサモ(常陸川, 2021.7.27撮影)
  • 南アメリカ原産
  • 耐寒性があり、おもに根茎で越冬する
  • 繁殖力が高く、地下茎で栄養繁殖する。
  • 開花期は夏(6月ごろ)
  • 抽水性の多年草
  • 日本では雌株しか存在せず、種子生産は確認されていない。
在来種や在来生態系への影響水面を一面に覆うと酸素欠乏を生じさせ、水生生物の生育・生息環境を悪化させる。在来生物と競合する。
治水・利水への影響植物体が水門等の施設に堆積し、ゲートの開閉等を妨げる。
枯死して腐敗すると、水質の悪化を引き起こす。
人間活動への影響船舶やカヌーの航行阻害を引き起こす。
オオフサモ についてもっと知る
水上葉(荒川,2019.7.23撮影)

開花期:夏から秋(9~10月ごろ)だが、6~10月まで開花との報告もある

茎(利根川, 2022.9.21撮影)

茎は泥中または水中で分岐しながら1mに達し、水面から高さ20~30cm茎を直立させ水面を覆う

水中根(利根川,2022.9.21撮影)

湖沼、河川、池、水路、一部の休耕田など、水が浅い所に生える

芽吹き(霞ヶ浦,2019.5.8撮影)

【参考文献】

  • 財団法人リバーフロント研究センター「改訂版河川における外来種対策の考え方とその事例」(2008年発行)
  • 環境省「日本の外来種対策 外来生物法」(https://www.env.go.jp/nature/intro/index.html
  • 国土交通省「地域と連携した外来植物防除対策ハンドブック(案)令和7年度増補版」(2025年4月)

【写真提供】

  • (株)建設環境研究所

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